| たかさんのウリマク高原便り 第108号 |
このままごろんと草の上に横になって寝てしまいたかった。
思惟の森に夜出かけてみました。黒いシルエットの放牧場の丘にはさまれて蛇行を繰り返す小川が星の明かりでぼんやり光って見えました。すらっと伸びたヤチハンノキが薄墨色の景色の中に黒い縦線を何本も太く描いていました。風のない夜は久しぶりです。早朝から野鳥の声でにぎやかな森を知っているので目をつぶれば思惟の森とは思えないなじんだ音が見つからない場所になっていました。聞こえるのは水の音だけ。ほんの小さな段差を滑り落ちる水が出す音とは思えないほど夜の森ではひびいていました。まだ虫の声も聞こえないこの時期だからこそ邪魔するものがないのです。しばらく行ったこの先のミズナラの森が始まるあたりに水が生まれる場所があるのです。千年も2千年も前から絶えることなく大地を少しずつ削り今の流れになったのでしょう。牧童が喉を潤したこともぬかるみにはまった鹿がいたこともふくろうの影を映したことも語ることなく流れています。目の前を暗闇で色を隠した小鳥が2羽一直線に横切って行きました。悪かったね脅かして。
まだ相手を求め続けるオオジシギが遠くの牧草畑の上空をジュビャー ジュビャー ガガガと飛び回ってるのがさびしく森にも聞こえてきました。
「風のない夜はこんなところでごろっと横になって眠りたいね」。でも、野性の熊やキツネもそんな風に思うのかなこんな夜にはと思ったら急に怖くなってしまいました。
帰りの道で見かけたのは熊さんではなくてかわいいちっちゃなキツネの子っこでした。
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